あの頃からあなただけが好きでした
「あ、それからお手数をおかけして申し訳ないのですが。
クレアさんにはご家族とお知り合いを5名様ほどお誘いくださいとお願いしたのですが、こちらの期待以上にお声がけ下さったみたいですね。
帰りにお渡しする予定の粗品が、バルモア様関係の方々には数が足りなくて。
後日郵送させていただきます、と皆様にお伝えいただけますか?」
丁寧だが、ある種の侮蔑を含めた物言いだった。
全然関係のない人様のパーティーに際限なく集まった我が一族を笑われた。
クレアは何人呼んだのかも、ブルーベルに伝えなかったのだ。
5人だけ?
両親と兄妹3人の人数を、彼は考えていたんだ。
恥ずかしくて顔から火が出る、とはこれだ。
それ以上返す言葉も見つからず、俺は……
その場から離れるしかなかった。
偽装……何の為にクレアはそんな馬鹿な真似をしたんだ?
俺に嘘の、茶色の石の。
おもちゃみたいな指輪まで預けて。
合図をしたら、彼に指輪を渡してね、と仰せつかっていた。
婚約とは全く関係の無いこのパーティーで、それを俺からブルーベルに渡して?
そしてそれから?
集まったゲスト達の前で、妹はどんな事をするつもりだったんだ?