あの頃からあなただけが好きでした

 ヤツはいち早くクレアを襲った犯人を捕らえたし、クレアの為に医者は居ないかと声かけはしたが。
 一度こちらに来てぐったりしている妹の怪我の状態を確認すると、さっさと行ってしまった。


 クレアはどうしようもない女だが、ブルーベルの関心の無さが哀れだった。


 人を掻き分けてやって来た母がクレアの顔の傷と出血量を見て気を失い、背後から兄アダムが支えた。

 命に別状はないのが不幸中の幸いだと言える様な状況ではない。
 この現実はこれからますますひどい方へ行くだろう。
 母が少しでもそれを見ずにすむなら、意識がない方がいい。


 父が被せられていたクロスを剥ぎ取り、男の顔を確認した。


「クレア、愛しているんだ!許さない!
 愛してる!許さないからな!」


 クレアへの愛と怒りを叫び続ける男。
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