あの頃からあなただけが好きでした

 何もかもが嘘だった。

 自分は妻からは離縁状を突きつけられているのに。
 クレアは退職日まで、職場で王都での婚約披露パーティーに来て欲しいと触れ回った。
 
 それを聞かされたオニールは双方から捨てられたと逆上して、パーティーに乗り込んできたらしい。


 クレアの自業自得と言えば、その通りだ。

 だが、その辺りの事情がオニールとブルーベルの供述から判明しても。
 妹の本命はずっとブルーベルだった様な気がした。


 幼い頃から自分の主張を通し、その為にその場しのぎの嘘を吐く妹だった。
 縁談から逃れる為の偽装と言いながら、ブルーベルの外堀を埋めて婚約から結婚まで行ける、と本気で思ったのだろうか……

 不倫相手のオニールの存在を、ブルーベルに知られていないと思っていたのなら、我が妹ながら愚かとしか言いようがない。


 ブルーベルの店は3日間休業したが、営業再開したら以前に増して盛況だった。

 父は損害賠償を支払う、とウチの屋敷に見舞いに来たカーティス・ブルーベルに頭を下げた。
 ヤツはそれを辞退して、反対に見舞金を置いて帰った。


 俺は詫びや礼なんか言いたくなくて顔を出さなかったので、それは後から父から聞いた話だ。
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