あの頃からあなただけが好きでした
 
 お医者様が居ないので、クレアのご家族がナイフが刺さったままの彼女を、後ろから抱き締めていた。




 クレアの様子を確認したカーティスが戻ってきて、王都警察隊が来るまで、黙ってずっと側についていてくれた。


 犯人が逮捕されて、クレアが運び出された後。
 カーティスも事情聴取で警察本部まで行くことになった。
 すると、それまで隣に居ても何も話さなかったのに、私の目を見て彼が言った。


「今日は遅くなるから、明日会おう。
 全部隠さずに話すから、もう一度だけチャンスをくれないか。
 終業時間に研究所へ迎えに行くから」


 明日会おうと言われても。
 私から離れた彼がトリシアに声をかけているのを、ぼおっと見ていた。


「ボルトン様、マリオンをお願いします」

 カーティスから名指しされたトリシアが来てくれるまで、私はカーティス以外の人を意識していなかった。
 我ながら、呆け過ぎている。


 婚約披露の場で、刺された婚約者に寄り添っていない彼の側に居たその姿が。

 彼に肩を抱かれ、傷付いたクレアと傷付けた男が連れていかれるのを見送ったその姿が。

 他の人達からどう見られていたかなんて、意識していなかった。



「ちょっと貴女、一体何者なのよ?」

 キツい口調で尋ねられたのは、クレアのご家族を連れたブレナーが通りすがりに私に声をかけた後の事だ。



「カーティスさんは、クレアの恋人でしょう?
 何でベタベタしてるのよ?」


 華やかなドレスをまとった同年代の女性達だった。
 見た目のタイプが似ているので、クレアの王都の友達だろうか。

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