あの頃からあなただけが好きでした
最終話 ブレナー26歳
「あり得ないだろ……」
マリオンの後ろ姿を見送って、スコットが独り言のように呟くのが聞こえた。
去り行くマリオンに向けた言葉だが、声が小さすぎて彼女には届いていない。
そして俺を振り返った。
「なぁ、これってほっといていいのか!
あの男もおかしいけど、マリオンだっておかしいだろ?」
「……マリオンがいい、って言うんだから」
「仕事辞めるまで、言ってるんだぞ!」
俺の前でそんな、恋人に捨てられた様な顔をするな。
こっちはあの女が居なくなって、せいせいしてるのに。
勿論、スコットにそれを悟らせたりしないけど。
あの女、マリオンの背中を俺は押してやった。
大切な友達を思いやる優しい顔をするのは、得意だ。