あの頃からあなただけが好きでした
「俺はアイツを信用出来ない」


 クレアとの事は偽装だったらしい、とスコットに教えたので、純粋なロマンチストのスコットは憤っている。


「元々、契約婚の話を持ちかけてきたのはバルモア嬢からです。
 それで私ははっきりと偽装なら、と言いましたし。
 バルモア嬢からも同意を得ていましたよ。
 まさか、本気で私のことを?」


 そんな確信犯的なブルーベルの言い分に、スコットは我慢ならないようだ。
 クレアを嫌っていたのに、カーティス・ブルーベルを昨夜から罵倒していた。


 あんな男を愛するマリオンも理解できない。
 脳内お花畑のバカな女だ、そう思えばいい。
 そんなタイプが一番嫌いだったよな?


「それを受け入れるマリオンもマリオンだけど。
 一晩でどうしてああなったか、教えてくれよ」

「初恋って厄介だ、って言っただろ、な?」


 スコットの質問の本当の答えは、俺がそうなるように誘導したから。



 聴取中のブルーベルの顔を思い出す。
 

 スコットとは違ったタイプの美しい男だ。
 世間に揉まれて強かさも狡さも持っている。
 昨日の事情聴取でも、自分に都合の悪い事までは話していない気がした。


 あの男がクレアの不倫を調べていないはずはなかった。
 マリオンとスコットが婚約などしていない事も、同様に調べれば直ぐにわかる。


 あのクレア襲撃事件は、全てを知っていたカーティスが仕組んでいたのじゃないか、と俺は睨んでいる。
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