あの頃からあなただけが好きでした
前日譚 カーティス24歳
目の前の女の瞳が。
信じられない、と見開いていた。
酔っていたのが、少し醒めた様にも見えた。
ガーランド市商工会会頭夫人。
それがこの女の肩書きで、唯一の長所。
それがなくなれば、この女には何も残らない。
この女、スタール夫人は俺に媚薬を盛った。
夫人にとって残念なことに。
俺には大抵の媚薬は効かない。
中等学園の2年生、14歳の誕生日の朝。
珍しく俺の部屋に来て。
真面目な顔をして、親父は俺に言った。
「婚姻は利に叶う相手と。
それまでは好きにしていい。
だが、決して中出しはしない」
「……何、朝から言ってるの……」
それは父というよりは、祖母からの教えだったらしいが。
内容の下品さに自分の耳を疑った。
「俺は15の誕生日に言われた。
お前の方が俺より早く、そういう事になりそうだから。
子種をあちこちに撒かれては困るからな」
「もう少しオブラートに包んでくれても。
キーナンには、いつ言ったの?」
「アイツはお前と違う。
先週友達の家に外泊すると言っていたのに、帰宅したお前から香水の匂いがしたと母さんが心配していたぞ」