あの頃からあなただけが好きでした
俺は淋しさを慰めるサービスは提供していない。
残念だけど、貴女が手に入れられるような安物の薬では、俺はどうにもならないよ。
何も変わらない俺の様子に、夫人は訝しげな表情を浮かべる。
「薬の事は誰にも言いません。
もうすぐ、閉店時間ですので、お迎えが参ります。
またのご来店をお待ち申し上げます」
今夜は1年かけてようやく解決した別件で気分がいいので、同席して相手をしてやった。
だがこんな真似は二度とするな、次はない、と
暗に伝えた。
◇◇◇
今日の午後にバージル・リースを確保した、と連絡があった。
早く親父に知らせたくて、閉店まで待ちきれないほど心が逸った。
思ったより素直にスタール夫人が迎えの馬車に
乗ったので、すこぶる気分が良い。
バージルをガーランドまで移送するか指示を待つ、との事なので、親父にだけそれを伝える。
母の耳には絶対に入れない。
俺達を騙した後、行方をくらましたバージルを探す役目は、自ら親父に志願した。
定休日前夜、遅くまでレストランで働き、始発
の汽車に間に合うように早朝に飛び起きる。
人を雇い報告させるだけではなく、自分で動きたかった。