あの頃からあなただけが好きでした
私がクレアの名前を出すと、スコットは少し考える素振りをして、やがて口元を少し歪めた。
端正な顔立ちの彼がそんな表情をすると、ひどく酷薄に見える。
「あの女……まだ付き合ってたんだ?」
「卒業以来だけどね。
昨日からこっちに戻ってるから」
スコットはクレアが好きじゃなかった。
大学で一度酔っ払ったクレアにしつこく言い寄られて、それからは避け続けていた。
講義をサボった彼女が、私からノートを借りて試験をクリアしていくのも、性格的に許せなかったみたいで、
『マリオンはあの女に甘過ぎるよ!』と私はいつも怒られていた。
「何か用事が有ったんじゃないの?」
「あぁ、ブレナーがさ、今夜夜勤だったから」
ブレナーはスコットの夫だ。
王都では2年前から同性婚を法的に認めていて十代半ばから交際していたスコットとブレナーは去年結婚した。
私は婚姻届の証人欄にサインして、彼等の家族みたいに付き合っている。