あの頃からあなただけが好きでした

 大学を卒業して、念願だったこの研究所に就職
出来た。

 この狭き門の研究所には、うちの大学から毎年
何人かが選抜されて試験が受けられた。
 成績優秀なスコットは余裕だったと思うが、私
はダメ元で受けてみて合格したのだ。


 ここに就職出来ないなら故郷コーカスに戻って
くるようにと父から言われていた。

 領地に居る姉のジュリアが子爵家の後継だが、姉は6年前から精神的に脆くなっていて。
 その頃の父は、姉に家門を託すのが不安だったのだ。


 だが、父には悪いが私は子爵家は継ぎたくなかった。
 だから、ものすごく頑張った。
 筆記も実技も面接も。


『女性は結婚や出産で仕事を途中で投げ出すから』
 そんな古い考えが、未だに就職市場で囁かれていたけれど。

 絶対にそんな事は起こりません、と私は面接官に力説した。
 その時の面接官が今の上司で、この人からは
『もし約束をたがえたら罰金を取るから』と言われている。


『それ』については余裕の私だ。
 
 そんな気はないし、そんな事は起こらない。



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