あの頃からあなただけが好きでした

 私がスコットと婚約、なんて嘘をついていたのはクレアしか居ない。
 そんな女を選んだ男が、選んだシャンパンなんて最高級だろうが口にしたくもなかった。


「もう出ましょう、スコット。
 この店は私好きじゃない。
 いつものロイの店に行きたいわ」

「わかった」


 先に立ち上がったスコットが私に手を差し伸べてくれる。
 彼の手に掴まりながら、私は言葉もなく立っているカーティスに言った。


「ブルーベルさん。
 貴方、本当に感じ悪い。
 こんな風になってしまうなら、あの頃のまま。
 もう二度と会えなくてもよかった」

「……」



 そして、私はスコットと店を出た。

 アフロデリアと名付けたのは、カーティスなのか。
 それとも彼の父親か。
 それももう、どうでもいいかな。


 早くこの店から。
 カーティスから離れたかった。

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