あの頃からあなただけが好きでした
「スコット、シャンパン好きなのに断っちゃって出てきちゃって、ごめんね」
「構わないよ、ロイのところで1杯奢ってくれたらさ」
「ずいぶん安い1杯だけどね?」
「あれさ、言いかけてたアレの。
結婚相手って、あれか?」
「あれあれ、ばっかりだけど。
あれが、アレのあれだよ」
「なるほど」
普段はズケズケ言うし、グイグイ追い込むように聞いてくるスコットなのに。
カーティスの事を詳しくは聞き出そうとしないのが。
なんとなくお察ししてくれているのが嬉しくて辛い。
この気持ちは何なんだろうね?
◇◇◇
もう2度と会えなくても良かった、それが本音
だった。
あの頃の綺麗な思い出のままでいて欲しかった。
あの夜、そう思ったから。
はっきり伝えたのに。
またカーティス・ブルーベルは、仕事帰りの私
の前に現れた。
今日は隣にアレ、クレアはくっ付けていないし、前髪は撫で付けられていなくて、自然なまま。
黒のシャツと黒のスラックスに、髪色に合わせた明るめのグレーのコートを羽織っただけで。
きちんとした大人の格好をしていないカーティスだった。