あの頃からあなただけが好きでした

「キーナンさんなんだけど!
 ジュリアへの手紙なの?」

「……いや、その事じゃなくて」


 いつもなら、ハキハキと話すカーティスなのに。
 何故か、今朝は歯切れが悪い。
 キーナンさんの事じゃないのなら何の話なんだろう?


 取り敢えず、やはり昼休みはカーティスとゆっくり話したかったから、図書室に急がなきゃ、だった。

『じゃあ、後でね』と、手を振って、彼に背を向けた途端。



「マリオン!」


 いきなり、カーティスに名前を叫ばれて、背後から腕を引っ張られて。
 バランスを崩した私は彼の方へ倒れ込んだ。
 何が起こったのか、理解出来なかった。


 視界がひっくり返って転倒したはずなのに衝撃は無くて、それは一瞬。
 誰かの悲鳴が聞こえて、つぶってしまった目を開いたら。

 私はカーティスに抱き締められたまま、廊下に倒れていた。
 転倒の衝撃が無かったのは、私の身体が直接廊下に倒れたのではなくて。
 倒れている彼に背後から抱きかかえられた状態だったからだ。


「大丈夫ですか?」

「うわっ、血が出てる!」

「保健の先生、呼んでこい!」

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