あの頃からあなただけが好きでした

「お前達、わかってんだろうな?
 これからは絶対に、廊下でふざけんな」


 ようやく身を起こしたカーティスのこんなに低い声は、初めて聞くものだ。
 有名な3年生に叱られた1年生ふたりは返事も出来ず、こくこく頷くだけだった。


 飛んできた木片を振り払った際に手の甲を切ってしまった彼に、申し訳なくて何度もお礼を言う。

 私は止血の為、髪を結んでいた茶色のリボンをほどいて、怪我をしたカーティスの右手に巻いた。


「ごめん、血が付いた……
 せっかくの綺麗なリボンを汚してごめん」

「何言ってるのよ、私を助けてくれたのに!
 リボンなんて気にしないで」



 後頭部を打ったので、駆けつけた保健医の先生から病院へ促されたカーティスは。

『お昼の約束はまた今度にしよう』と、言って。
 同行しようとした私を止めて。
『早く、図書室に行ったら?』と、笑った。

 それから……それから彼は何を言ったっけ?



 そうだ、リボン。
 汚れたリボンの事を彼は気にしていて、こう言ったんだ。

『今度、代わりのリボン、プレゼントするから』

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