あの頃からあなただけが好きでした

 ……だけど、卒業式に彼は現れず、卒業生として名前を読み上げられる事もなかった。


 卒業式の3日後には、ブルーベル商会は閉店して。
 コーカスから撤退したのだ、と噂を聞いた。



 後日ジュリアからは、キーナンさんが他の女性と駆け落ちしたのだと聞かされた。
 卒業式前日に私を訪ねてきたカーティスから聞きだしたのは良かったが、自分の中でその事実を受け入れるのに、今日まで時間がかかったの、と薄く笑っていた。

 私がカーティスが卒業式に現れなかったこと。 
 ブルーベル商会がコーカスから撤退して、彼も
黙っていなくなったこと。
 それを話すと、ジュリアは笑うのをやめた。


「貴女に詩を残していくだけ、お兄さんよりマシな男じゃないの」


 ジュリアは精一杯の皮肉をこめて、カーティスを評価したように言う。
 姉は壊れかけていた。

 
 そして、私はカーティスに会えなくなった。
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