あの頃からあなただけが好きでした
大学の広い構内をふたりで歩きながら、私は考える。
カーティスはマリオンの現在をどれくらい知っているんだろう?
今日来るのを知らせていないだけで、手紙のやり取りはしていたのか?
それとも卒業以来、全く付き合いが無くて……
だけど彼はマリオンが何処に住んでいるのか、わかって訪ねてきてる。
私が彼に近付く為には、そこをはっきりさせておきたい。
「カーティスさん、あのマリオンとですね……」
マリオンが居る研究室がある棟まで、もうすぐ。
私は立ち止まり、隣の彼を上目遣いで見上げた。
私達の身長差でこの角度は完璧だ、と思ったのに。
カーティスは私の顔を見ていなかった。
彼の視線の先には、話しながら研究室棟から出てくるマリオンとスコットの姿があった。
スコットとの話に夢中のマリオンはこちらに気付いていない。
スコットが笑いながら、マリオンの肩を抱いて何か耳元で話している。
それでまた、楽しそうなマリオンが笑っていた。
まあ、私からしたら、それはいつもの見慣れた光景なんだけど。
カーティスの足は完全に止まってしまった。
これはチャンスかも。