あの頃からあなただけが好きでした

「子供の頃からの友人で、ずっと『キーナン』と呼んでいたのに、兄貴が働くようになって。
 上司の『キーナンさん』になり、親父が退いた先では自分の『旦那様』になる。
 そんな事にも我慢がならなかったみたいだ」 


 キーナンさんとは会った事はなかった。
 だけど彼の為人は、ジュリアから。
 カーティスから。
 2年以上聞いていた。


 大切にしていた幼馴染みに殺されたキーナンさんの無念を思い、私は泣いた。

 尊敬していた兄の死を語るカーティスが、こんな風に話せるようになるまで。
 どれ程心がちぎれそうになったのだろう、と。
 想って、泣いた。


 それから2日間、キーナンさんの事を姉に伝えるか、伝えないか。
 ずっと考えた。


 その結果、故郷へ帰ろうと休みを申請して。
 今に至る。
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