あの頃からあなただけが好きでした
キーナンさんから財布を奪った殺人者は、彼が
胸ポケットに入れていた指輪をそのままにして
いた。
リングにはイニシャルが彫られていて、付いて
いた石も小さくて。
台座から外しても大した額にはならない、とふんだのだ。
それはカーティスの瞳と同じ蒼い石だった。
1度も会わなかった姉の恋人。
キーナン・ブルーベルはカーティスと同じ色の瞳をしたひとだった。
その指輪を見つめる義兄の瞳は暗い茶色。
「私からジュリアに話すよ」
義兄の声はとても静かで。
この話をどう受け止めたのか、うかがえなかった。
◇◇◇
両親とジュリアには、休みの消化の為に里帰りをしたのだと伝えていた。
その手前、義兄に託したからと言ってもとんぼ返りは出来なくて。
2日後に王都に戻ることにした。
義兄に任せたのだから、彼がいつジュリアに話すのか、聞くのもやめた。