あの頃からあなただけが好きでした
クレア22歳
大学で親しげなマリオンとスコットの姿を見てカーティスは黙って帰ろうとした。
私に案内してくれたお礼だけを言って、立ち去ろうとした彼に。
『どうしてこの男は私に、簡単にさよなら言えるの?』と不思議だった。
大抵の男なら私とこのままお別れしたくない、と食事やお酒に誘うのに。
上手い具合にマリオンとスコットの仲を誤解したなら、余計に隣に居る私に目を向けてもいいはずなのに。
「カーティスさんはコーカスに住んでらっしゃるんですか?
もしご都合がいいなら、王都の美味しいお店にでも……行きませんか?」
何で女の私が誘わないといけないのよ。
イラついたけれど、彼が誘わないから仕方ない。
「いや、明日はもう帰らないといけないので、失礼します」
『にべもない』とはこうだ、と見本のように彼が答える。
さっきまで愛想よく微笑んでいたのに、全く笑いもしない。