【短】夏のせい、君のせい。
来い、夏
──わたしね、引っ越すんだ。
数秒前のセリフが、もう一度脳内で再生された。
……嘘?
あまりにも突然のことで、まったく頭がついていかない。
頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けて、視界まで暗くなる。
俺と、隣にいる夏奈はいわゆる幼なじみというやつだ。
母親同士が幼なじみで仲が良く、いまも家が隣で、誕生日は同じ。
それだけで、運命を感じるには十分だった。
ここまでそろっていたら、さすがに運命だろう。
だから、というわけではないけど、俺は夏奈のことを特別に思っている。
兄妹みたいに育ってきて、これからもずっと一緒にいるんだろうなと、漠然に感じていた。
なのに、そんな夏奈と離れることなんてありえない。
ありえないから、少しも考えたことはなかった。