孤高の極悪総長さまは、彼女を愛しすぎている

シャワーを掛けられて、髪もびちゃびちゃで、涙なんか紛れちゃってわかんないと思った。

でも雪くんは、はっとしたように手を離して。



「杏実……、」


戸惑った声と同時に、シャワーが床に落っこちた。

ふたりきりの空間に、シャアァァァ……と水音だけが響き続ける。

わたしと雪くんの足元を濡らしていく。


冷たかった。



「………怖がら、せた」

「……、」


「………泣かせてごめん」

「雪くん、」


先に続ける言葉が見当たらない。


怖かった。それは本当だけど。

涙が出たのは、それだけじゃ、なくて……。



──“かんたんに壊れそうで
……いつも、すげーこわい……"


雪くんが、先に、泣きそうな顔をしたから……。
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