孤高の極悪総長さまは、彼女を愛しすぎている
「手荒なのがいい、優しいのやだ……っ」
「……なんで?」
「優しくされたらどきどきしちゃうから……本領くんはわたしが憎くてやってるのに、おかしいでしょ……?」
また、原因がわからない涙ががぼたぼたと零れた。
頭の中もぐちゃぐちゃで、もういろいろとだめ。
心臓は最初からずっとせわしなかったし、泣くのにも体力いるし。
あれはよくて、これはだめで。
なにが吉で、なにが凶か。
ただしい判断で悩むのも、すごく疲れる。
ニセモノの優しさに心をかき乱されて、秘めるべきことも勝手に溢れていってしまう。
「今日、本領くんが声掛けてくれたときうれしかったんだ……。わたしを騙すためでもうれしかったの……体調悪いのひとりで我慢してるの、ちょっとだけ辛かったから……」
「………あれは騙そうとしたわけじゃ、」
言い訳は聞きたくない。
よけい惨めになるから。
現実を遮断するようにぎゅっと目を閉じたら、最後の一筋が流れた。
視界が暗くなった途端、体からすうっと力が抜けていく。
あ、また……。
下へ下へ落ちていく、あの感覚……。
「そのネクタイ使って首でも締めてくれたほうが、まだよかった……よ……」
本領くんの腕の中、
静かに意識を手放した。