孤高の極悪総長さまは、彼女を愛しすぎている

白湯を用意してくれた、みたい。


解熱剤……。

そっか、わたし風邪ひいてて、朝から頭がぐらぐらしてて。


まりやちゃんと佐々木くんがデートに行くまでは耐えられてたんだけど、お昼休みになったら急にぐわーってしんどくなっちゃって……。


5限目、情報室に場所が変更になってて、慌てて向かおうとしたけど、体がいうことをきいてくれなくなって。



ベッドで休みな、と。

本領くんが手を貸してくれたところまでは覚えてる。

その手があったかくて涙がでそうにかったところまでは……覚えてるのに……。



「あの……勘違いだったらごめんね。わたし、保健室に行ったんじゃなかったっけ……?」


本領くんは、ちょっとだけ間を置いて。



「覚えて、ない?」

「う……う、ん」

「なんにも? 俺と一緒にいたときの記憶、一切ない?」

「っ……」



確かめるようにわたしをのぞき込んだ瞳が、ゆら……と揺れた気がした。
< 155 / 313 >

この作品をシェア

pagetop