孤高の極悪総長さまは、彼女を愛しすぎている

今から家に行くなんて無茶なことを言ったけど、聞き入れてくれてよかった。

やっと杏実と一緒に過ごせる……。


食事の心配と、風呂まで用意してくれるとか、うれしすぎる……。



「雪様。加藤様宅には22時5分到着予定でございます」


運転席から声がかかる。


「うんっ、わかった〜。ありがとう〜」


もっと急げよと出かかった声を、喉奥に留める。

もし事故でも起こされて杏実に会う時間がさらに遅くなったらたまったもんじゃない。



「あ、ねえ。母上には、僕はちゃんと直帰したって伝えといてね」

「はい。承知いたしました」

「絶対に絶対だからね〜?」

「もちろんでございます。雪様」


……よし、これで母親のヒステリーは回避できた。

縁談のあとに別の女のところに向かうなんて知れたら、どうなることか。

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