孤高の極悪総長さまは、彼女を愛しすぎている
ったく。次から次へと女を紹介してきやがって。
相手に恥をかかせずに破断にさせんの、結構むずいんだっつーの。
神経使うし。顔の筋肉つるかと思った。
母親が探偵集めさせた情報は、おれにとっても有益だった。
相手の苦手なものを徹底的に頭に叩き込んで、会話の流れでその話題にもっていく。
自分の苦手なものを好きと言われて、いい気分になる人間はまずいない。
理解はあったとしても、違和が生まれてやがて不信感に変わる。
それが重なると、相手はその不信感をはっきりと「価値観の違い」だと判断するんだ。
「雪様のことは、とても素敵な方だと思います。ただ……根本的な考え方の違いといいますか、今後共に生活していくにはお互いに厳しいかもしれません」
ほぼシナリオ通りの回答が返ってくる。
それでも構わずこちらの権力に執着してくる女もいるが問題ない。
周りが知らないそいつの秘密を1つだけ提示してやれば、相手は血相を変えて自ら破談を要求する。