孤高の極悪総長さまは、彼女を愛しすぎている

もうやめろ、と立ち上がる。

昔のことを掘り返されるのは苦手だ。いい思い出がまったくない。



「そういえば杏実さんは、雪様のことを永遠に “ ただの情緒不安定な人間”だと思ってるの、アレおもしろいですよね」

「“杏実さん”?」


「おっと口が滑りました」

「わざとだろ。煽りに乗る気力は生憎ねーよ……」


「では改め加藤様……。初めにお会いしたときは頭のゆるい、めでたい女だなと思っておりました。雪様が執着される理由が正直まったくわかりませんでしたね」


こいつ……。



「今なら何を言ってもおれが怒らないとでも?」

「ええ。ですからお伝えするなら今しかないと思いまして。申し訳ございません。俺もたぶん、加藤様のことが好きなんですよね。……いつの間にか好きでした」


中城はそう、なんでもないことのように言い放った。
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