孤高の極悪総長さまは、彼女を愛しすぎている

「……は」

「あの方すごいですよ。俺は伝達事項以外は基本的に“はい”か、“いいえ”しか応えないのですが、毎日毎日凝りもせず話しかけてくるのです」


「まあ……杏実はお喋りだからな」

「初めは俺に媚でも売りたいのかと思っておりました。けれど、きっと初めから俺に返事なんて求めてないんですよね。聞いてもらうために話してるんじゃない。喋りたいから喋ってるだけで」



そう。杏実の行動は自分の気が赴くまま、自由気ままに本能的で、こっちのペースをいつだって乱してくる。

喋りたいから喋る、食べたいから食べる。

嬉しいから笑う。悲しいから泣く。

当たり前のことように思えて、あそこまですべての行動に嘘がない人間は珍しい。


「ほんとめでたい頭だよ。他人の心に土足で踏み込んでくるくせに、周りの自分に対する気持ちにはすこぶる鈍いんだぜ」


悪く言えば自己中なのに、あのでたらめな強さに何度救われたかわからない。

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