孤高の極悪総長さまは、彼女を愛しすぎている

「あれだけ雪様のそばにいて気づかないのはおもしろかったですよ。ときどき、わざとなんじゃないかと思うくらい」

「おもしろいことが多くていいなお前は」

「今日は本当に怒らないんですね。殴られると思ってました。皮肉を返すだけで精一杯とは」



どうしてこう冷静でいられるのか、自分でもわからない。

好きな女が、よりにもよって本領と、おれの知らないところで繋がっていた。

中城はそれをおれに黙っていて、挙句、自分も杏実のことが好きだと言う。


気がおかしくなりすぎて、一周回って何にも感じなくなったのかもしれない。



「人間、傷心しすぎると感情を喪失してしまうことももちろんありますが、今の雪様は違うように見えます」


相変わらず、こいつはこちらの思考を見透かしたかのようなタイミングでものを言う。



「雪様の殺気はわかりやすいんですよ。皆の目はごまかせてもいつも俺にはバレバレです。けれど今は本当に穏やかな感じがいたします」

「……お前よく恥ずかしげもなくそんなこと言えるな」

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