孤高の極悪総長さまは、彼女を愛しすぎている
杏実の中に、派閥という概念はおそらく存在しない。
SolとLunaに無関心なのがその証拠だ。
おれ自身に興味がないわけではなく、SolとLuna、天沢派と本領派……そういう区切りに無頓着。
これは、みんなが平等であるべきだという立派な考えからではなく
杏実自身がどうでもいいと思っているから、どうでもいい、というだけのハナシ。
杏実が一度、おれのことを友達だと思えば、おれは友達以外の何者でもない。
極端なハナシ、
たとえおれが凶悪殺人鬼だったとしても、杏実がそれ以前におれを友達だと思っていれば友達。
それほど恐ろしく自分に素直なんだ。
他人の評価──善悪にまったく囚われない。
だから杏実の視線が本領 墨に向いたとしても不思議じゃないと……。
初めからわかっていたから、いつかこんな日が来るんじゃないかと恐ろしかった。
周りがいくら本領を“悪”だと噂したところで、それを判断するのは杏実。
たとえ本領が本当に“悪”だったとしても、杏実が好きだと思えばそれでいいのだ。
おれの好きな女の世界は
そういう風にできている。