孤高の極悪総長さまは、彼女を愛しすぎている
なんでみんな信じきってるの?
みんなの頭どうなってるの大丈夫?
──────なあんて、不思議に思うことじゃ全然なかった。
この世は、天沢 雪くんが “そう” 言えば “そう” なる世界なのである。
なんか壮大なストーリーが出来上がっちゃってたけど、助かった……。
雪くん、どういう心境の変化なんだろう。
わたしの愚行も許せちゃうくらい、今日の情緒すこぶるよかったのかな……。
これでもう、まりやちゃんとも話せる……?
今すぐにでもまりやちゃんのところへ飛んで行きたい気持ちを抑えて、雪くんの姿を探す。
──────探そうと、した。
「ていうか、ゆきあみ、距離置くらしいね」
不意に、そんな会話が耳に入ってきて、ぴたりと足を止める。
「雪くんがお見合いするからだってさ……。せっかく加藤さんの喉が治ったタイミングでつらいよね……」
「それみんな言ってるけどほんとなの?」
「ほんとだよ! だって雪くん本人が言ってたんだもん! 家の事情に杏実を巻き込みたくないからって。だから杏実とは距離を置くけど、ていうかゆくゆくは別れることになっちゃうと思うけど、みんなそっとしておいてくれると助かるって」