孤高の極悪総長さまは、彼女を愛しすぎている
憎たらしい。
そうだよね、敵だもんね。
怪我の手当してくれるとき、優しかったから……ほんの少し心がぐらぐらした。
でも中城くんの言うとおりなんだと思う。
本領くんは雪くんを憎んでて、だからわたしのことも嫌いで。
わたしに近づくのは利用するためでしかない……。
「ていうかさ、かとーあみちゃん」
「っ、なに?」
上半身を起こして向かい合う。
真っ黒な瞳の中に捉えられて、どくっと動く心臓。
「……いや、やっぱり大丈夫」
「え……」
「俺の理性がまともに働いてよかったね」
最後にそんな言葉を残して、本領くんは保健室を出ていった。
ひとりになった途端、怪我した部分のひりひりが、急に強くなった気がした。