孤高の極悪総長さまは、彼女を愛しすぎている
無視して敷地を進めば、連中は懲りずと追いかけてくる。
「墨様、お待ちください!」
「無駄だって。あんた達の言うことを聞く気は毛頭ないし。まあ、力づくで俺をどうにかしたいならどーぞご勝手に」
ほら、無防備ですよ、と。
両手をひらりとさせてみせたところで、相手はなにもできない。
力の差を身に沁みてわかっているからだ。
本領家の息子としての権力ではなく、“俺”との、物理的な力の差を。
だから代わりに、言葉で諭そうとする。
「巴様は、学校を自己都合でお休みになられたことなど一度ございませんよ……!」
計算通り、その名前が出てきてほっとした。
本領 巴。
──本領家長男、俺の実兄。