孤高の極悪総長さまは、彼女を愛しすぎている

「巴様の成績なんて、一体何に使われるおつもりですか?」


成績表のコピーを持ってきたメイドは、なかなか部屋から出ていこうとしなかった。



「参考にしたかっただけ。目標あったほうがいいと思ってさー。いくら落ちこぼれでも、本領家の品位を落とすわけにはいかないし」



目標を定めるため。引き算に必要なだけで、嘘はついていない。

兄と比べて、弟は劣ると思われなければいけない。

ただそれは、身内にしかわからない程度の差でなければいけない。


本領家の品位は保ちつつ、巴には少し劣る……という、バランスの良い評価を得るために必要なことだから。



「……で。まだなんか用があんの? 出ていってほしいんだけど」


なお扉の前に立つメイドに声をかければ、肩をびくりと震わせて。

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