孤高の極悪総長さまは、彼女を愛しすぎている

ぎり、と奥歯を噛む。

こんなくだんねー話をするためだけに、わざわざ学校から連れ戻したのか。


改めてテーブルの上の紙と写真を見て、吐きそうなくらいうんざりした。


これは盗撮されたもの。
相手方が用意した見合い用の写真なんかじゃない。


天沢家の嫁候補として山のように申し出がある中で、母親は、気にいった女を探偵に調べさせる。


個人の学歴、性格はもちろん、服やアクセサリーのブランド、行きつけの店、人脈、血縁関係にある者すべて、徹底的に洗い出す。

この執念は異常だ。



「……そっか、わかった〜。考えてみるね。見合いの日はいつ?」

「雪ならそう言ってくれると思っていたわ。今週の日曜日、いつものホテルをとってあるからお願いね」


うふ、と笑う顔に寒気がした。

だいたい、言葉遣いとかいつの時代のお嬢様だよって感じだし。気取ってるのも鼻につく。


温室育ちで社会にも出たことがない、まじで世間知らずな母親。

とりあえず前向きな姿勢だけでも見せておけば、かんたんに機嫌がとれる、単純で馬鹿な女でもある。
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