孤高の極悪総長さまは、彼女を愛しすぎている
杏実と離れるのを想像するだけで目眩がした。
そのままベッドに倒れ込めば、出会った頃の思い出がゆっくりとよみがえる。
──そういえば、杏実と最初に話したのは、保健室のベッドの上だった。
高熱が出て、それでも家にいるほうが苦痛だから、無理やり学校に行った。
保健室で休んでるときに、今日みたいに母親から電話がかかってきて……。
熱のせいもあっていつも以上に気が触れて、“素”のおれのまま、中城に当たっていたところを
偶然、杏実に目撃されたんだった……。
ありとあらゆる暴言を数分間吐き続けたあと、ふと顔を上げた先で杏実と目が合ったんだ。
中条以外の人間に、素のおれを見られたのは初めてだった。
『中城、この子とふたりで話したいから出ていって』
真っ先に考えたのは、どうやって加藤杏実の口を封じるかということ。
脅すのもいいし、金でもいい。
とりあえず1番この女が飲みそうな条件を提案してやろうと思った。