孤高の極悪総長さまは、彼女を愛しすぎている
一緒にいるのは怖いけど、厚意に逆らっても何をされるかわからない。
気に触れないよう相手の言うとおりに動くが吉。
……これは、今まで雪くんと過ごしてきた中で学んだ大事なこと。
本領くんが座ってバイクが安定したのを確認して。
「ちょっと、肩借りますね……」
一瞬だけ掴ませてもらってから、ひょいっとシートを跨いだ。
「おお、さすが」
にこ、とまた不意打ちの笑顔が向けられる。
もう大丈夫だと思ってたのに、心臓はやっぱり大げさに反応してしまった。
ばくん、ばくん。
こんなに激しく鳴ってるのって、小学生の頃、劇の発表会本番で、セリフが飛んでしまったとき以来かもしれない。
全身が心臓になったみたいに、自分の鼓動しか聞こえないの。
静まる気配もまるでなくて、もはや壊れちゃったんじゃないかって不安になってくる。
劇の発表会のときは、血が下の方にさあああっと冷たく流れていく感覚だった。
でも今は、血が滾ったみたいにぐわぐわ……と全身が熱くなっていく感じ。
こんなの初めてかもしれない。
どうなってるの……?
走ってたせいで乱れた呼吸は、とっくに整ってもおかしくないのに、
バイクが走りだしたあとも、酸素が足りないような息苦しさがずっと残っていた。