溶け合う煙
定時になるころには手持ちの仕事も片付いていた。

帰り支度を終えると、人があまり来ない非常階段に繋がる廊下でトーマスに電話をした。

「Hello」
「あの。。。今朝、ライターを借りた者です。岡田 理沙(おかだ りさ)と申します。マイ ネーム イズ リサ オカダ。」
「理沙ていうんだね。僕のことはトーマスと呼んで欲しい。」

電話から聞こえる彼の声はとても優しい。

「あぁ…。君の声を耳元で聞けて嬉しいよ。今どこにいる?僕は車だから、ぜひ君を迎えに行かせてもらえないだろうか。」

英語よりな言い回しのせいか、彼の言葉は甘く謙虚に感じる。

「今はまだ職場です。そしたら…」

車だというので、会社のビルの車寄せがあるエントランスへの行き方を説明した。

これからトーマスが迎えに来ることになったと佳代ちゃんに伝えると、彼がどんな人か見てみたいというので一緒にビルのエントランスで待つことにした。

30分ほどしてビルの入り口に真っ黒くピカピカなリムジンが止まった。
そして、降りてきた人物は当然トーマス。
周りの社員たちも何事かと注目していた。
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