溶け合う煙
…まさか、あんな立派な車で来るなんて!!

彼はまっすぐ私の方へと歩いてくると

「待たせてごめんね。」

と、私の手を取りキスをするかのように口元へ運ぶ。
そして、チラッと佳代ちゃんの方を見た。

「あ、彼女は私の同期です。待っている間一緒に話をしていたの。佳代、こちらがトーマスさん。」

「は、、初めまして。」

「こちらこそ初めまして。ぜひ、ご一緒にと誘いたいのだが、今日は理沙を口説かなければならないんだ。申し訳ないが、この後はご遠慮願えるだろうか?」

トーマスの言葉に佳代ちゃんと二人で耳まで真っ赤になる。
今まで付き合ってきた人は、二人きりの時でさえ、こんな甘い言葉を言ってくれた事はない。

「え、あ、もちろんです。私はこれで!」
そう言いながら会釈をすると、佳代ちゃんは小走りに駅の方角へ消えて行ってしまった。

「さぁ、僕たちもここを出よう。レストランを予約してあるんだ。気に入ってくれるといいな。」

トーマスは先ほどから掴んだままの私の手を自分の方へ引き寄せ、反対の手でスマートに私の荷物をつかむとリムジンへと向かわせた。
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