甘く、溶ける、君に。



「結局積もる話してないし」



確かに、それはそうだけど。

昨日は全然話すことしてないけど。



でも、それでも千輝くんと登校なんて。



……昔みたいだ。昔は一緒に投稿するのも当たり前だった。

幼なじみだから? 家が近くだから? 今も、隣に住んでるから当たり前なの?



……そんな当たり前も、私にとっては当たり前じゃないから……。


あの頃、千輝くんと登校してた頃以来、一緒に登校するのは出発地が同じで目的地が同じ、それだけの理由でしかなかったから。



誰かが隣にいて話して登校する、至って普通なことも私には行為の後につくおまけのようなものだった。


普通が普通じゃないから、千輝くんにさらっと言われるたびにその普通に溺れたくなってしまう。


戻れなくなりたくないけど、引き返したくもなくなる、私の中で矛盾がたくさんある。



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