甘く、溶ける、君に。
……早かれ遅かれ、昔から私を知っている千輝くんは絶対に聞いてくると思ってた。
そりゃそうだよね。親同士の交流もあって、表向きは仲の良い家族だって思われてたから。
……いや、違う。
千輝くんだけは、違うじゃん。
唯一私が寂しくて、愛されたかったこと、知ってた人だ。私が唯一、話した人。
覚えてて、そのうえで聞いてる? どちらにせよ、この人に隠す必要はない。
「お父さんとお母さんの間に、もう愛なんて、ないから」
「……ごめん、忘れて。変なこと言わせた」
「……覚えてた?」
「うん、覚えてた。ごめん、ほんと忘れて」
千輝くんはやっぱり覚えてた。
昔、私がきみにこぼしたこと。
私の両親はもう愛し合っていなくて、私のこともなんとも思っていない。
寂しくて、愛が欲しくて、みんなが羨ましかったって。
その話を、千輝くんにしたことは覚えてる。