甘く、溶ける、君に。






「思ったより手出したの早かったな」



隣の席からかけられた第一声。

彼より早く教室に着いた日は一度もない。


朝、おはようもなしにそんなことを言ってくるのは、田邊らしいといえば田邊らしい。



そしてこの男、ただ噂で知っただけかもしれないけど毎回毎回私が誰と登校してきてるかチェックでもしてるんだろうか。

私のこと好きすぎでしょ、恋愛的な意味でとかじゃないけど。まぁ、窓際の席だし見えるだけかもしれない。



まだ早めの時間だからそこまで人が多くいるわけじゃないけど、千輝くんといることでやっぱり視線は感じるわけで。

千輝くんといるから、ってそれだけじゃないと思うし、純粋に千輝くんに向けたのもあるとは思うけど。


別クラスの千輝くんとは教室前で別れて……つまり、教室まで一緒に来たってこと。



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