甘く、溶ける、君に。



多分、これだ。怖いんだ。


私は怖がってる、千輝くんに対しての自分に。



「怖い?」


「そう。千輝くんを知って……戻れなくなりそうで」




戻れなくなる。彼の優しさに触れて、千輝くんがいなきゃ何もできなくなりそうで、いなかった頃の生活に戻れなくなるのが、怖い。



ねえいったいこれは、どういう感情?


昔なじみの男の子に対する、ふつうの感情? それとも依存? それとも……好き?



「あーーそっか、なるほどね」



面白がって興味本位で聞いてそうだった田邊が天を仰いだ。


そっかーー、と同時に伸びをしながら。



上を見るから、私からは表情が見えない。



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