甘く、溶ける、君に。
「でも、私……好きな人がいるの」



気持ちを踏みにじる。

ぐしゃぐしゃにして、捨てるみたいに。気持ちをそのまま、空に向かって投げたみたいに。



自分勝手で最低で、救いようのない人間だから。

ここまできたら私はそのまま、最低な私でいるよ。

後戻りして、いい子になりましたー、なんてできないよ。しちゃダメだよ。



"好きな人"なんて、私といま目を合わせて喋っているあなた以外にいないのに。



好きな人は、きみじゃないよって。


泣きそうなの、気づかれてないかな。



最低な私でいられてる? 嬉しさ、殺せてる?


私のこと、嫌いになってくれる?




_____好きだよ、千輝くん。



最低で卑怯で自分のことしか考えられない私は、大好きな人に向けて、世界でいちばん残酷な嘘をついた。





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