甘く、溶ける、君に。
足は止めずに、教室ではなく保健室へ向かう。
チャイムが鳴る五分前。
この時間が一番、昇降口に人が多い。
教室に向かう人の波に逆らって、保健室のある別の校舎へ向かう。
目の前について、三回ドアをノックするけど、返事はない。
だけど鍵は開いていて、中に入ることはできた。
「失礼します〜……」
よく来るわけではないから違うかもしれないけど、
保健室の先生が返事をしてくれなかったことは今までなくて。
いないのかな? と机を確認する。……やっぱりいない。
その代わり、ソファーに座る人影が見えた。
頭しかみえてないけど、ベージュの髪が太陽の光でキラキラして見えて……私、知ってる、この人のこと。