甘く、溶ける、君に。
離されて、ホッとするはずなのにどこか名残惜しくなってもどかしくなってしまって。
でもそんなこと言えないし、振り向いて顔を見ることもできない。
千輝くんはどんな顔をしているだろうか。きっと余裕そうに笑ってるんだろうな。
「またあとでね、遥乃」
「……うん」
ちょっと反抗するのもできないし、受け入れて素直に可愛くすることもできないから結局こうして頷くことしかできない。
私ももう少し、素直になれればいいのに。
だけど不意打ちで、こんなにドキドキさせる千輝くんだって悪いよ。
いつも余裕で、私ばっかりドキドキしてるんだもん。
ずるい、千輝くんは。
……でもそのずるさ、私だけが知っていたいし、千輝くんにドキドキするのは私だけがいい……って、本当は今すぐ伝えたいけど。
ずっとずるい千輝くんのままでいて。私が想いを、伝えられるまで。
ドキドキ鳴る音は、もう止まんないんだもん。