甘く、溶ける、君に。
「なるほど?ふふっ、千輝?」
私が呼べば、必ず君は私のほうへ顔を向けるから。
その一瞬で、ぐっと背伸びをして、唇に冬の温度を落とした。
「……っ遥乃、わかってる?」
「意地悪返し、へへ」
「……帰ったら覚えとけよ」
……あら。多分、スイッチ入れちゃった。
でもまあ、いっか。
これからもずっと、君に甘さに溺れてしまうんだから。
君も少しくらい、私に溺れちゃえ。
冷たい冬の温度みたいに、熱さに溶けちゃえ。
繋いだ手、甘さが冷たさを上回る。
手の冷たさは甘さに溶けて、たまには私が勝ったって、いいよね?
after story #1 -fin-