甘く、溶ける、君に。








「髪、染めたんだね。黒も似合ってる」


「ありがと。落ち着こうと思って」


「そっか。また会おうね」


「井上くんに殺されたくはない」


「3人で会おう」


「残酷なこと言うね、遥乃ちゃん」




俺の好きな子は、卒業式の今日までずっと俺のタイプのど真ん中だ。


遥乃の甘ったるい匂いが恋しい。


最近学校でも表情が豊かになったことに自分が関わっていないことが悔しい。



「諦められんのかな、俺」と、自然とこぼれた言葉はきっと君には届いていない。


こんなにも女々しく過去を引きずる俺の言葉なんて1ミリも届いてほしくない。





──1人の女を、桃井遥乃を引きずったまま高校を卒業した2年後、俺は、彼女そっくりな意地っ張りでカワイイを自覚した女に振り回されることになる。







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