甘く、溶ける、君に。


「ごめんね、一人にしちゃって」


「いいよ〜、それより大丈夫だった?……顔、赤くない?」



それは何が原因なのか、私にもよくわからない。叩かれたからなのか、千輝くんのせいか、走ったせいか……。


だけど心配そうにする絵凪に、叩かれたことをわざわざ言う必要もないから黙っておく。


叩かれたことも、千輝くんのことも。




「お昼食べる時間なくなると思って走ってきたからかな?」




なんてとぼければ、いくら不自然だとしても絵凪はそれ以上聞いてこない。


ほとんど食べ終わった絵凪とは対照的な、ご飯もおかずも全部残っているお弁当箱を今度こそ広げる。



……毎朝手作りするのも、なんだかんだ楽しい。そんなふうに別のことを考えてみたりして。




「……なぁ、遥乃。今日のは俺のせい、ごめん」





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