甘く、溶ける、君に。
上から声が降ってきて、顔を上げる。
いつ、男子の輪の中から抜け出してきたのか。
私が教室に入る時、たしかに友達と喋っていた田邊。
田邊は女癖こそ悪いけど、私とは違ってちゃんと友達も多くいて。
これが男子と女子の差なのか、はたまた田邊と私の差なのかといつも考えるけど答えは出そうにない。
そんな田邊がいつのまにか自分の席である私の隣に座っていた。座っているのも椅子ではなく、机に軽く腰掛けるようにして。
気づかなかった。……あ、朝も忍足、なんて言ってたっけ。
あまり大きくない声で周りに聞こえないように言って、珍しく田邊が申し訳なさそうな顔をしていた。