甘く、溶ける、君に。
見るからにチャラい、この男の名前は田邊 瑛斗。
実際田邊に泣かされた女は数知れず。特定の彼女は作らないで来るもの拒まず。多分分類的には"最低"、それでいてそれは私にも当てはまる。
「ていうか、最近神崎先輩多くない?今日も神崎先輩の家から登校でしょ?」
「ん……タイミングも合うし、先輩は見返りなく満たしてくれるから」
「へぇ」
神崎先輩は、何かと都合がいい。
この学校の三年生で、一つ上の先輩。
先輩のご両親が家を開けることが多くて、その時は大抵呼ばれる。
先輩だって、彼女でもない女の子を家に連れ込むんだから、誰もいないほうがいいに決まってる。
もちろんそれだけじゃなくて、先輩は私を彼女のように優しく愛してくれるから心地がいい。
先輩といると、寂しさが紛れる。満たされる。
だから最近は先輩に呼ばれたら断らないし、先輩の家に行くことは結構多い。
……まぁあくまでそれだけで、私と先輩の関係が"恋人"に昇格することはないんだけど。